西荻窪の「とら屋食堂」、尾久の「なんどり」に続いて、ミールスお礼参りツアーの第三段は勝田台の「葉菜」。
「葉菜」は「はな」と読む
千葉県八千代市にあり、最寄り駅は京成本線の勝田台駅、東葉高速線の東葉勝田台駅。ちなみに京成の方が電車賃はちょっと安いよ。
フルネームがカツタダイっていう名前の人、日本に何人くらいいるのだろう。
店は駅の南側にある繁華街っぽいエリアにあった。
看板がなかったら絶対に南インド料理の店だとは思えない外観。湯葉がおいしい店っぽい。
ランチミールスは1000円+税から。
店内もわかりやすいインド感は薄めでシュっとした作り。ビストロやバルのお店みたいだ。
店主の吉田さんはホテルマンの仕事を経て、フレンチ、イタリアンの店で料理人としての修行をしたのち、隣のビルでバーをやっていたのだが、あるきっかけで沼尻さんと出会って南インド料理に目覚めてしまい、12年前にこの店をオープンさせた。そんな経歴がこの店の雰囲気に滲み出ている。
そのあたりのいきさつは「作ろう!南インド料理の定食ミールス」に寄稿いただいた、ご本人のエッセイで読めるのでぜひ。
ランチメニュー
メニューの写真と解説もすごくちゃんとしていた。さすが元フレンチ&イタリアン。
ランチ、ディナー、バーで料理の内容や料金が違い、今回はちょっとお得なランチタイムに訪問した。
ランチのミールスは4種類。ライス、パパド、サンバル、ラッサム、ポリヤル、ダル、ライタ、チャトニ、旬の野菜までは共通で、メインの料理(ベジ1種とノンベジ1種)が変わってくる。
- ベジミールス:1100円(ベジのメインから一品)
- ノンベジミールス:1100円(ノンベジのメインを一品)
- スペシャルミールス:1430円(メインを二品 ※ベジ+ノンベジでもベジ+ベジでもOK)
- ドーサミールス:1100円(ドーサ)
本日のメインは、アルゴビ(ベジ)、ワッタルコロンブ(ベジ)、チキンカレー(ノンベジ)、ドーサ。
プラス330円でチャイかラッシーかコーヒーとデザート付き。ラッサムとサンバルとライスはおかわり無料。
せっかくの機会なので葉菜の味を全力で堪能するため、ベジベジのスペシャルミールスをデザート付きで注文。
料理が到着するまでの間、メニューを熟読してお腹を空かせる。ここのミールスを食べるコツは、ラッサムとライタの使い方がポイントのようだ。
コップの中身がお冷かと思ったらお湯で驚いた。
久しぶりに飲むお湯はしみじみうまい。南インドのミールス屋さんでは水じゃなくてお湯がでるという話だが、確かに体を温めてくれるお湯はミールスに合いそう。
そしてミールス到着。すごく華やかだ。
パパドをどけるとこんな感じ。品数がすごく多い。おかずだけで12種類あるので、このデザインの時計ができそうだ。
本日のメニュー
季節野菜(トウガン)のサンバル。
キリっとした辛さで、姿こそ見えないがしっかり使っているというトゥールダルの甘みを引き出しつつ、あくまですっきりした澄んだスープに仕上げてある。
ただ毎日このタイプのサンバルという訳ではなく、メニューの写真にあるようなゴチャっとしたタイプを出すこともあるとか。
頻繁に食べにくるお客さんも多いので、定番メニューのサンバルにあえて変化をつけているのだ。日本の定食でいったら味噌汁みたいな存在なのだろう。
店の看板ともいえるラッサム。
吉田さんが自分でも野菜を育てていることもあり、せっかくの食材をなるべく無駄にしたくないという想いが強いため、普通の店なら捨てるような部分もスパイスと一緒に煮だして作っている。野菜由来の甘み、深み、旨みがすごい。そこにスパイスと油のパンチ力が加わるのだからそりゃうまい。
ラッサムとはスパイスと野菜で作る薬膳スープのようなもの。これが吉田さんの解釈なのである。
本日のメインはアルゴビ。
初めて食べる料理だが、調べたらアルはジャガイモ、ゴビはカリフラワーのことで、食材の名前そのままの料理名だった。
明らかに食べたことのない料理だけど、なぜか懐かしく感じる甘じょっぱさ。ものすごく舌に馴染む。ジャガイモとカリフラワーは普通に煮たものとは明らかに違う歯ごたえだし、マスタードシードのプチプチ感も歯に気持ちいい。そして柑橘系のさわやかさがアクセントになっている。
ミールス本のおかげである程度は作り方を理解したと思っていたが、この料理は味付けも調理法も全くわからなかった。こういう経験こそが外食の醍醐味である。
食後に作り方をそっと伺ったところ、タマリンドやトマトなどで作ったグレイビーに、素揚げしたジャガイモとカリフラワーを和えて仕上げるそうだ。柑橘系と感じた爽やかさはホールで入れたコリアンダーシード!
あー、なるほど。自力では絶対にたどり着けない答えである。いわれてみれば確かにそうだと納得しまくりの材料と調理法に脱帽。
もう一つのメインはワッタルコロンブ。
ワッタルが干し野菜で、コロンブは汁の多い煮込み料理。ちなみにボタっとした汁の少ない煮込みはクートゥーと呼ばれることが多いとか。
これもまたミールスの概念を力強く広げてくれる一品。とても賑やかな味わいと歯ごたえで、使っている干し野菜はなんと切り干し大根と干し椎茸。まさか干し椎茸の旨味をどっしりと感じるミールスがあったとは。
ダル。
パクチー入りの滑らかタイプで、豆の優しい甘みは癒し系的な存在。ミールスはやっぱりおかずのチームプレーだよなと膝を叩く。
ライタ
野菜は具としてほとんど入っていないが、明らかに野菜の味が感じられて、確かにカード(ヨーグルト)ではなくライタなのがおもしろい。他のおかずと組み合わせる味変に大活躍。
「旬の野菜」は春菊のココナッツ和え。
生の春菊にこんな食べ方があったのかと目を見張った。おそらくインドにはない料理。
ココナッツとトマトのチャトニ。
フランス料理のソースのような濃厚さと滑らかさがすごい。こっそり材料を聞いて納得。
柚子のピクルス。
辛さは抑えめで、柚子独特の苦みが口をさっぱりさせてくれる。これもミールスには絶対必要な存在。
沼尻さんのチャトニの作り方はこちら。もちろん吉田さんのとは違うレシピだよ
ニンジンのポリヤル。
細いのにしっかりと残るニンジンの歯ごたえに、素材の良さが表れている。ポリヤルとトーレンの違いはミールス本を読もう。
「旬の野菜」がもう一品、コマツナとニンニクの炒め物。
店名に葉菜を名乗るのだから葉物野菜は必要不可欠。もちろんうまい。
パリッパリですごく香ばしいパパド。
作り方を聞いたら本に掲載したものと同じだったかが、とても香ばしくてすごくうまく感じられた。なんでー。
本日のライスは南インドでよく食べられているポンニライス。
日本米だと思って食べると独特のクセに驚くかもしれないが、この風味がミールスのおかずにとても合う。ありがとう、ポンニライス。
ライス、サンバル、ラッサムはおかわり無料。ライスを頼んだら皿で運ばれてきて大変かわいい。
サービスで出してもらったカードチリ。
カードチリという料理の存在は知っていたが、こうして口にするのは初体験。青唐辛子をヨーグルトとスパイスに漬け込んで、干して乾燥させたものを揚げて作った自家製である。
これが想像していたものと全然違って(料理に入ったホールチリをうっかり噛んだときみたいな味だと思っていた)、サクサクして風味豊かな食べ物だった。後から辛味がやってくるけれど、これくらいならおいしく食べられる。へー。
伝わりにくい表現で恐縮だが、ちょっとイナゴの佃煮っぽさがあったので、いつかカードイナゴを作ろうかな。カードはヨーグルトのこと。
甘さ控えめで茶葉の味がしっかり出ているチャイ。
甘いのが苦手な人にもおすすめできる味。私は沼尻流の甘いチャイに舌が慣れているので砂糖を追加させてもらった。
カルダモン入りニンジンのパウンドケーキ。
温かいケーキと冷たいアイスのコントラストが鮮やか。
どちらもすごくうまく、普段はあまり頼まないデザートを頼んでよかったと小さくガッツポーズ。
ミルクと砂糖入りのインディアンコーヒーもいただいいた。
甘いけどしっかりとコーヒー。
最近、新聞に載ったそうです。
どっかで見たことのある人が!
こんなところに素敵な本が……
吉田さんには南インド料理の師匠が二人いて、一人は「ケララの風II(現:ケララの風モーニング)」の沼尻さん、そしてもう一人が世界を渡り歩いたインド人のアンディさん。
沼尻さんからはケララ州の、アンディさんからはタミルナード州の料理を学んだ上で、そこに独自の解釈を加えて葉菜オリジナルのミールスを構築していることがよくわかった。
野菜が持つ食感や風味を食べる側にしっかりと受け止めさせてくれる吉田さんのミールスは、ベジでも十分すぎる多幸感に包まれる。特に歯ごたえのバリエーションがすごい。季節によって使う野菜や料理法が変わってくるので、また日を改めて食べに行かなくては。
沼尻さんリスペクトの舌だし写真。
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