我が家の力強い製麺機に不満があるとするならば、それは切刃の種類の少なさだろう。
両刃型の小野式製麺機でも、2.2ミリと4.2ミリの2種類のみ(一台だけ6.3ミリのひもかわ用だけど)。そしてこの2.2ミリというのは、細いように見えて、実はうどん用なのである(小野式のマニュアルにそう書いてある)。
他の製麺機も、ほとんど2ミリ前後の切刃のみ。私はもっと細い麺を作りたい。
小野式は切刃単品の販売もおこなっていたようだが、もちろん生産中止で出回ることもほぼない。ヒデちゃんは2.2ミリと1.3ミリという超レアな組み合わせの両刃型をもっているけれど、そんなのはもう手に入らないだろう。
そこで試してみたいのが、舶来物のパスタマシンである。これはカツオの刺身をマヨネーズで食べるようなものであり(違いすね)、鋳物製麺機使いにとっては禁断の道具ではあるのだが、切刃の種類が豊富なパスタマシンがあれば、もっと製麺機を楽しめるのではないだろうか。
ということで、とりあえずスープを仕込む。
「趣味の製麺」に載っている、私のレシピのやつをベースに適当に。
生地の配合は、これも「趣味の製麺」に載っている、マダラさんの中華麺バージョンを参考にしてみた。強力粉はコストコで買った安いやつだけど。
水回しした生地を、真空パックができるシーラーではなく、コスト重視でジップロックに詰め込んで、空気を抜いたらタオルを掛けて足で踏み、袋の中で伸ばしていく。
あえて一切捏ねないで、圧力のみで生地をまとめることで、中華麺らしい歯ごたえを重視してみた。
この生地を冷蔵庫で数時間寝かせたら、袋をハサミで破いて、製麺機のローラーの幅に入るようにカットする。
このやり方、素晴らしいかも!
この生地をのすのは、なぜか家にある普通サイズの田中式製麺機。
大型モデルと同様のヘリカルギアが、力強く生地を伸ばしていく。
パスタマシンでこれをやると、たぶんぶっ壊れるんだよね。
ちなみに田中式はギアの形以外にも、いろいろとこだわりのある部分があるので、そのうち小野式との比較をしてみたい。
「なんだよそれ!」っていう部分がいろいろとあるのですよ。
生地がある程度うすくなったところで、ようやくパスタマシンの出番である。
これは6.5mmと1.5mmの切刃に加えて、3mmと1mmの交換用切刃がセットになったもの。
送料込みで3000円くらいという、製麺機だったらありえない値段である。
どうなってんだ、パスタマシン業界。
使用前にシャリバナーレでメンテナンスをするのだが、やはり値段相応という部分が多々あり、オモチャっぽさは否めないかな。
パスタマシンの製麺機との大きな違いは、ある程度生地を薄くしてからでないと、ローラーを通すことができないという点。しかし、製麺機である程度薄くした生地であれば、低加水だろうとなんだろうと、当然問題なく伸ばすことができるようだ。
またパスタマシンは、ローラー幅の調節が1(0.2mm!)~7までのダイヤル式なので、毎回同じ厚さの生地を作ることができるようだ。
ただし、この調節機能の部分が安っぽく、すぐに壊してローラーを使えなくする予感がプンプンするのだが。
とりあえず「3」の厚さで生地を伸ばし、一番細い1mmの切刃に通してみると、小野式や田中式のような滑らかなギアの回転の気持ちよさはないものの、打ち粉を使わずとも問題なく麺ができてきた。
なんだ、パスタマシン、便利じゃないか。
これをハンガーにでも引っ掛けて少し乾かせば、博多風ラーメンもできるかも!
さすがは1mmの細麺、いつもに比べてすごく早く茹る。
茹で時間が短いのはいいんだけれど、やっぱり伸びるのも早そうなので、イベントなどでの提供は難しそうかな。でも憧れの極細麺が家で作れるというのは素晴らしいね。
まあ太麺の方が好きなんだけどさ。
用意しておいたスープに薄口醤油などで味をつけて、茹でた極細麺を入れていただく。
ブラボー、ブラボー、完璧な極細麺。
2杯目は、生地の厚みは「4」にして、切刃を1.5ミリにしてみようかな。
いつもの2.2ミリよりも一回り細く、秀ちゃんが持つ小野式中華ソバ用の1.3ミリよりも微妙に太いという、きっと東京風ラーメンに一番フィットする太さ。
ついでに具は特殊製法で作った蒸し鶏。
これの作り方はまた今度。
そんなこんなでできあがったラーメンに、たっぷりの黒胡椒をかけていただいたのだが、ラーメンらしいラーメンということでは、今までで一番の出来かもしれない。チャーシューじゃなくて蒸し鶏だけどさ。
すばらしいね、パスタマシン。
硬い生地を伸ばそうとすると壊れるという評判から、使いもせずに低い評価をしていたのだけれど、どんな生地でも伸ばせる力強い鋳物の製麺機と組み合わせれば、はっきりいって最強。
これぞ、和洋折衷、呉越同舟、製麺革命。
技の豊富さと力強さという組み合わなので、「今いくよ・くるよ」、あるいは「ピンクの電話」、はたまた「宮川大介・花子」、いややバッファローマンとモンゴルマン(ラーメンマンだったかな?)の「2000万パワーズ」のようなものだ。
ということはだ。とりあえずローラー部分が使えるジャンク品の製麺機と、安物のパスタマシンを組み合わせることで、麺類ならなんでもできてしまうということか(刀削麺を除く)。
家に何台もある小野式の両刃型とかいらないじゃん!
おっと、自分の製麺機コレクションの価値を貶めてしまった。