趣味の製麺

家庭用手回し式鋳物製麺機(小野式製麺機など)を使った、自家製麺のラーメンやうどんをを楽しんでいます。

ミールスお礼参りツアー:群馬県前橋市の「インド食堂チャラカラ」でベジミールスとエビビリヤニなど

ミールスお礼参りツアー(「作ろう!南インドの定食ミールス」に協力してくれた店舗巡り)をすっかり完走した気になっていたが、そういえば群馬県前橋市のチャラカラはマサラワーラーと共催のイベントで訪れただけで、まだ通常メニューを食べていなかった。

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あれはあれでとてもおいしく、すごく楽しいイベントだったのだが、やっぱりチャラカラ店主である岡田さんオリジナルの味を確認しなければ。

そこで、おせちに飽きたらカレーもねと正月明けのタイミングで、ランチを食べるためだけに前橋へとやってきた。

駐車場は店の裏側にたっぷりとあります。

前橋に突然現れる南インド。イラストはマサラワーラー武田さんによるもの。

タミルナードスタイルのミールスとのことです。

本日のチャラカラのランチメニュー

チャラカラのランチメニューは、カレープレートランチとベジミールスの二本立て。

ノンベジのカレーも気になるが、ここまでなにをしに来たのだという話になるので、大人しくベジミールスを注文。

チャパティでノンベジなカレーを食べるのもいいですよね。

カレーはここから選びます。アーモンドチキンカレー食べたい。

ミールスがなにかをわからない人にはオススメしていないのが素晴らしい。お互いにとって不幸な出会いは避けたいですよね。

は、はい。

ミールスの食べ方。これもマサラワーラー武田さんの絵ですね。

本日のチャラカラのベジミールス

しばらくして品数豊富で豪華なミールスが登場。

タミルナードスタイルと書かれていたけれど、私がイメージするタミルっぽいミールス(そんなに知らないですけど)とも少し違う、華やかで繊細な盛り付け。そして全部がすごくうまい。

これだけたくさんオカズが並んでいて、似ている味がまったくないからこそ世界が広がるのだろう。塩味やスパイスの強弱、甘さや辛さの緩急、とにかくプレート上のバランスが素晴らしい。

※使われる野菜やメニューなどは季節によって変わります。

ゴージャス&ビューティフル!

手前には個性的なポリヤル三種、右奥は手作りのナスのアチャール。ライスはバスマティと日本米のブレンド。

たっぷりと豆や野菜が溶け込んだ具沢山のサンバルはちょっぴりピリッとスパイシー。

トマト味に頼らないスパイスの風味を味わうタイプの優しいラッサム。

豆の甘みがうれしいダール(パリップクートゥ)。

パンチ力のあるワッタルコランブ(干し野菜の煮込み)。丸いのはターキーベリー(スズメナス)で、ちょっと苦みのある味がミールス全体に奥行きを出している。

ただのカード(ヨーグルト)ではなく、モール?(マスタードシードなどが入ったスパイシーな冷たいヨーグルト)がついてきた。

デザートはカシューナッツの存在がうれしい、牛乳を煮詰めて作ったパヤサム。

チャラカラのミールスが完成するまで

このこだわり抜かれたミールスが、一体どのようにして培われてきたのかがとても気になる。聞くところによると岡田さんは料理人になってまだ10年も経っていないとか。

そこで食後に少し時間をいただき、岡田さんがインド料理人になった経緯などを伺った。

こちらは同行者が注文したスペシャルメニューのエビビリヤニ。米にしっかりと染みたエビの存在感がすごい。

 

それは10年くらい前、岡田さんがまだ会社員だった頃の出来事。

高崎出身の岡田さんが小学生時代から通っていた『カリーのからゐ屋』の店主から、「俺も70過ぎたからさ、もういつやめてもおかしくないよ」という言葉を聞く(といいつつまだ元気に営業中)。

このカレーが食べられなくなるのは寂しいなと、作り方を教えてくださいと頼んでみたら快諾されて、しっかりと仕込みを見せてもらうという貴重な経験を得る。これがすべての始まりだった。

それまであまり料理を作ったことはなかったそうだが、何度も通ううちに近い味が作れるようになり、さらに英語で書かれたインド料理のレシピ本を店主からいただいくと、その味を紐解くために伊勢崎にあった『マディナカレーレストラン』を訪問。どうにかしてシェフのシャムスディンさんなどと仲良くなって、本場の料理を教わるために通うようになる。

またインド人にとっては当たり前の存在すぎて教えてもらいづらいスパイスの基本などを学ぶため、香取薫さんの料理教室へも入会。料理なんてパスタを茹でたり肉を焼くくらいだった岡田さんは、いつのまにかすっかりインド料理に貪欲な人になっていた。

 

反対側からもどうぞ。

 

それから約一年後、シャムスディンさんが南インドのケーララ州に里帰りするというタイミングで退職し、一緒に渡印をしてケーララとカルナータカ(ケーララ州の北側にある州)のバンガロールを行ったり来たりしながら、四か月以上に渡って南インド料理をじっくりと学ぶ機会を得る。

そして帰国後、知り合いの後輩がオーナーをしている元スナックの物件と出会い、工務店の友人とDIYで改装をしてチャラカラをここにオープン。ちなみにチャラカラとはシャムスディンさんの実家がある街の名前。

心に秘めたコンセプトは「インド人が食べておかしいと思わないインド料理」。それを前橋で唐突にやるのだから気合がすごい。メニューは最初からミールスとカレー数種類という、今とほぼ同じ構成だったとか。まだ都内にも南インド料理店がそれほどなかったころの話である。

 

せっかくなのでノンベジのアーモンドチキンカレーとチキンチリも注文しちゃう。

 

オープンから二年が経過した頃、ケーララ北部出身のエンジニアが毎週通ってくれるようになり、その人の実家を頼って再び武者修行の旅へ。現地のミールス屋さんで働いたり、ビリヤニが上手なおばさんに習ったりしたことで、岡田さんの料理がさらにブラッシュアップされていく。また『ケララの風II』で店主の沼尻さんに仕事を見せてもらうという経験も。

そして今から5~6年前、アジアハンターの小林さんが企画した食事会で、板橋の『ヤジニ(YAZHINI)』に勤めていたマハリンガムさん(現在は祖師ヶ谷大蔵にある『スリマンガラム A/C』のトップシェフ)の味に惚れ込み、またもや通って料理を教わる。ヤジニが閉店した際にはチャラカラに呼び寄せて、次の就職が決まるまで一緒に厨房に立ってもらったそうだ。

それからもインド人の常連さんと仲良くなるたびにタミルなどインド各地へと何度も旅立ち、現在に至る訳である。ものすごい行動力と探求心。

こうして各地方・各料理人のエッセンスをたくさん吸収した上で、「自分だったらこうするな」と試行錯誤をして完成させたものが、今日食べた岡田さん独自の味なのである。

 

締めのマトンキーマとチャパティ。満腹!

 

ということで、チャラカラはベジミールスはもちろんノンベジ料理も最高。

お店のメニューにあるのは岡田さんが持つ引き出しのほんの一部分なので、お好きな方は自主的に何人か集めて、ノンベジ食事会をお願いしたら楽しいんじゃないでしょうか。

ありがとうございました!

チャラカラ(X:twitter)

 

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