ラーメンハゲの鮎の煮干しラーメンが食べたい
家庭用製麺機を買ってしばらくしたころ、ラーメン作りのお勉強のためにと「ラーメン発見伝」という漫画を買って読んでました。
当時はラーメンを店で食べる習慣がほとんどなかったので(今もあまりない、ラーメン自体よりも製麺文化と製麺機が好き)、とても勉強になった本です。
実用的なレシピがどうこうというよりは、主にラーメン好きな人がどんな存在なのかという勉強ですが。
で、この本に出てくるラーメンで、一度再現してみたいなと思っていたのが、ラーメンハゲこと芹沢達也さんが人気店「らあめん清流房」で出している、鮎の煮干しを使った「淡口らあめん」です。
「ラーメン発見伝」1巻より、淡口らあめんの説明。「らあめん」という表記がもう最高。
「ラーメン発見伝」7巻より、みんな大好きなラーメンハゲこと芹沢達也さん。
「ラーメン発見伝」7巻より、淡口らあめんの全体像。具は半熟卵、メンマ、ちゃーしゅう、ネギかな。
鮎の煮干しでとったスープ、どんな味か気になるじゃないですか。
よし、私も作るぞということで、友人から鮎の友釣りを習うことにしました。
はい、もちろん鮎を釣るところから手作りします。
小川で鮎釣りを教えてもらう
とはいっても、鮎の友釣りは釣りの中でも難しさはトップクラスだし、専用の長い鮎竿は何十万もするらしいので、未経験の私が習ったのは大きな川の清流ではなく、漁業権の設定がされていない小川です。
「え、ここ?」っていう場所でした。
こんなところで鮎の友釣りが成り立つんですかね。
というか、鮎が本当にいるの?
あ、いた。
鮎の友釣りとは、生きた鮎にハリをぶら下げて泳がして、縄張り争いで戦いを挑んできた鮎を引っ掛けるというもの。
友人から習う釣りだから友釣りではないですが、今回はそれでもいいでしょう。
オトリとなる鮎に鼻カンというパーツをつけて、目の前を流れる小川へ。
本当にフナでも釣るような小川です。
あるいは観光地にあるニジマスの釣り堀。
あっさりと釣れる鮎。すごい!たのしそう!
わたしもやらせてもらいましょう。
オトリの鮎をどうにかしてセットして、鮎の縄張りを荒らさせます。
犬の散歩じゃないけど、糸の引っ張り方次第で、意外と思った通りの場所を泳いでくれます。ここはポイントが目の前なので、練習には最適の場所ですね。
しばらくすると鮎がアタックしてきて(水中でキラキラと見える!)、急に仕掛けが重くなりました。
あー、全然違う。鮎の重さが単純に二倍となるだけではなく、縄張りあらしに怒り狂った地回りの鮎が引っかかって暴れることで、ギョンギョンと何倍も引くんですよ。
リードをつけて犬の散歩をしていたら、物陰から野良犬がやってきて喧嘩をはじめて絡み合ったみたいな感じです。そりゃリードも重くなりますわ。
なるほどー、これが友釣りの魅力かー。
川が狭いので大きな鮎はあまりいないけど、小さくてもすごく引きますね。
とても楽しい鮎釣り入門、ありがとうございました。
私の10倍のペースで釣る友人の鮎と合わせて、ありがたく調理させていただきます。
鮎の煮干しを作ろうと思ったら焼き干しになった
しっかりと冷やして持ち帰った鮎を丸ごと使うか、内臓を抜くかで迷ったのですが、小さい鮎なので、コケだけではなく水生昆虫なども食べているっぽいので、内臓は抜くことにしました。
これを天婦羅にすると最高なんだ。
丸ごと食べると、骨までサクサクで川の香りがフワッとして、そりゃ京極さん(by 美味しんぼ)も元気になるわという味。
うっかり天婦羅で全部食べそうになりましたが、我慢。
素焼きにしてから天日で干して、鮎の焼き干しを作ります。
おっと、間違えた!
焼き干しじゃなくて煮干しが正解だった!
アゴ(トビウオ)の焼き干しと頭の中で混ざって、アユも焼き干しにしちゃったよ。
まあ……いいか。
「ラーメン発見伝」1巻より、鮎を開いてから煮干しにしたのが正解らしい。
ようやく淡口らあめんを作ってみる
それから一年半、煮干しと焼き干しを間違えたショックで冷凍庫に放置して忘れていたのですが、続編である「らーめん才遊記」のドラマ化(行列の女神~らーめん才遊記~)という話を聞いて思い出したので、ようやくラーメンを作ります。さすがテレビ東京。
煮干しじゃなくて、焼き干しですみません。
漫画に淡口らあめんの作り方はたぶん描かれていないので、ここから先は適当です。ここの前も適当ですが。干し椎茸と昆布も追加しましょうか。
温度管理が容易なヨーグルトメーカーに入れて、60度で8時間くらいダシをとってみましょうか。設定が33時間になっているのは無視してください。
はい、すごい濃い鮎の焼き干し出汁が完成。
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これを煮立たせないで、ザルで濾します。
そのほうが淡口っぽいかなと。
この時点で出汁の鮎感がものすごく濃いです。
内臓を抜いてもまだ残る苔っぽさ、独特の川魚らしさ、僅かな苦み(焦がしたからかも)、味わったことのない出汁だこれ。
さて淡口らあめんは鮎だけではなく、なんかいろいろ入っているらしいです。
なぜなら、おすましじゃなくてラーメンだから。
「ラーメン発見伝」1巻より、鶏ガラ、豚骨、野菜類などが使われているらしいぞ。
スーパーで買ってきた鶏手羽元、ネギ、生姜、梅干しであっさりしたスープでもとってみましょうか。めざせ淡口!
豚骨は売っていなかったので、代わりに豚肩ロースを塊でドーン。
沸騰させないで煮込みます。
麺は、鮎に合いそうな大地感がありつつもバリっとしているような気がするので、北関東伝統の小麦である農林61号と、フランスパン用のリスドォルをブレンド。なぜならこの二つが使いかけだったから。
加水率35%、かんすい1.5、塩0.5で生地を作り、切り刃はトーカイ麺機の1.5ミリでストレートに仕上げました。
醤油ダレはシンプルに、薄口醤油におろし生姜と粗挽き胡椒を加えて、一煮立ちさせたもの。
これに上記の煮豚を浸してから使います。
うまいぞ、鮎の焼き干しラーメン
仕上げです。
鮎の味が濃すぎるので、鶏スープ10:鮎スープ3の割合で合わせて温めて、丼でタレと調合。
合わせスープの味を確認すると、こりゃやばい。こうなるのか。
そこに茹でた麺を入れて、具は煮豚とネギにしてみました。
清流房と全然ちがう仕上がりですが、もう諦めましょう。
見た目が普通過ぎてすみません。
試食します。
「ラーメン発見伝」1巻より。過去に放送されたドラマ版だと芹沢さんは鹿賀丈史だったみたいです。なんでだよ。
このラーメン、すごくうまい。スープはこの割合でも十分に鮎が主役になっている。確かに鮎を使った淡口のラーメンだ。いや「らあめん」か。
煮干しじゃなくて焼き干しにしたことで、苦みと香ばしさが加わっているけれど、個人的にはプラス要素になっているような。豚骨もいらないような。遠くで梅干しが良い仕事をしているような。豚骨入りの煮干し版を食べたことないけどね。
すごくうまいけど、わかりやすくはない。寿司でいうと白身魚で脂が乗っていないけど妙にうまいやつ。看板にしづらいうまさ。この系統を舌が理解しているからこそ、ありがたがれる味。いや、ありがたいと思える舌でありたいと思う味。溶かした牛脂をダバダバと掛けた濃口が受けるのもわかる。
こだわって作りたくなる味だけど、万人受けはしづらい落とし穴。理想としてはこの味を理解してほしいけど、経営としてはちょっと難しいという、漫画で描かれていた世界そのままの方向性が再現できたのが素晴らしい。
鮎の煮干しという素材、850円のラーメンとしては実在しそうでしないであろうところがうまいよね(あるのかもしれないですが)。本当にあったら原価いくらなんだろ。
ということで、大変おいしかったです。
次はフナで作ってみたいですね。
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